遊記レビュー[張果登場]
◆謎の老人張果の巻
張果は天地開闢(かいびゃく)の時から日月の精を得て、年を重ねること幾久しく、化して人となった。後に、恒州の中篠山に隠循し、宛久の教えを受け、鉄拐などの諸仙と道についての説法をした。汾(ふん)と晋(しん)の間を往来し、長く生きて老いることのない。長老たちは言う。自分が子供の時にも彼は百余歳のおじいちゃんであり、今と少しも変わらないと。
【謎1】伝承で語られる姿はいつも老人で、誰も張果の生い立ちを知りません。「生まれは?」と聞くと「数百歳。」と笑って答えます。その顔はどう見ても六十、七十ぐらいでした。白いロバに後ろ向きに跨って、一日に数百里も進むことができ、休む時は紙のようにロバを折りたたんで箱にしまいます。また、水をかけると、それは元のロバに戻ります。
【謎2】張果が鳥を指すと鳥は落ち、花を指すとその花もポトッと落ちる。鎖でしめた門も開いてしまい、再び指すとギーとひとりでに閉まる。宮殿ごと見知らぬ土地へパッと移動させて、またもとに戻したりする。水に入っても沈まない。火に入っても蓮の花が現れ、これを助ける。次から次に尽きることなく仙術を使って人を驚かせる。
言ってしまえば中国版イリュージョ二スト。そんな不思議な老人に、興味を示さない人がいるでしょうか。いや、いない(反語)。そんなわけで皆が張果の正体を知りたがります。
唐の高宗も張果を召し出そうとしますが、全く行くつもりのない張果はなんと死んだふりでごまかします。炎熱の中、体は腐爛し虫が湧いてきて、誰もが張果の死を疑いません。しかし暫くすると山中で目撃されます。不気味なじいさんです。
さて間元二十三年、唐明皇こと玄宗皇帝は、やっぱり張果の事が気になり、使者をやって恒州に張果を迎えにやらせます。張果はこれもシカト。
しかし今度はある時になって、急に礼をつくして天子に会おうという気になり、自ら京まで赴きます。明皇は誠意をもって張果を迎えたために、それからは東の京の集賢院に身をおくことにしました。帝が神仙になる方法を尋ねると、張果は答えず、息を止めて、そのまま幾日も食べることをしなかったそうです。すねた?
ある日、帝に酒を勧められると張果は断り、「私はわずか三升しか飲めませんが、弟子に一斗飲める輩があります。」と答えます。これを聞いて喜んだ明皇は、その弟子を連れてこさせました。弟子は十五、十六くらいの年で、顔立ちは眉目秀麗です。帝はその道士がいたく気に入って、酒を勧めたところ、本当に一斗飲み干してしまいました。
「もう勤めないで下さい。これは飲み過ぎると、ちょっと酒癖が悪くて、天子様もお笑いになりますでしょう。」と張果が横から口を挟みますが、明皇はますます面白がって酒を飲ませようとします。道士もそろそろ酔いが回ってふらふらしながら立ち上がると、頭のてっぺんが盛り上がり、次の瞬間ほわんと金の酒樽になってしまいました。その酒樽、実は集賢院のモノでしたー、というオチ。 この後も明皇と張果の交流が続きます。
「酒をいくら飲んでも酔わない力士は、そういまい。」と明皇がある日、力士たちに向かって言いました。この帝、飲み比べが趣味なのかもですね…。とにかくそれでムッと来たある力士が酒杯を取って一気に飲み始めました。しかし三杯飲むと、早くもぐったりとしてしまい、「いやあ、皇帝。こりゃぁ、あまりいい酒ではございませんなぁ。ハハハ。」と言い訳します。その口をみると歯が真っ黒に焦げていて、力士は慌てふためき如意棒に拝み始めます。張果は見かねて、薬を取り出し、それぞれの歯につけてやりました。すると、ジューと音を立てて歯は元に戻り、玉の如く輝いたと言います。
余談ですが、この話、ウィキペディアに載ってるのと少し違います。ウィキでは、酒を飲んだのが力士ではなく張果自身で、仙人であることを確かめる為に帝が毒入りの酒を持ってこさせて飲ませたことになっていますね。気になる方はこちらでご確認下さい。どちらが合ってるのか、二つ説があるのかは、私にも分からんのです。中文できたら確認するのにな(´・ω・`)バイリンガルさん、マジでヘルプ・ミーです。
またある時、咸陽で一匹の鹿を捕えた明皇は、それを料理するように命じました。すると張果が「これは仙鹿でございます。すでに年も千歳ぐらいになりましょうか。昔、漢の武帝の元狩五年の時、侍従がこれを林にて捕え、また逃がしたのでございます。」と言います。
流石に怪しんで根拠を聞くと、鹿の左角に長さ二寸足らずの銅製の札がついているのを指摘して、それは漢の武帝が放った時につけた銅の札だと言いました。さらに元狩と言ったら何の年にあたるか、今年で何年目になるのかを問うと、「はい。癸亥の年にあたり、まさに、武帝が昆明池を造成した年。今日まで、八百五十二年の月日が経っております。」と証言し、正しいか調べさせたところ、おおよその数が当たっていました。
◆張果の正体の巻
何もかも謎だらけの張果ですが、ついにその正体が一人の道士によって、バラされることになります。道士は葉法善(ようほうぜん)といって、嘉禾の人で、代々道士の家の生まれでした。それ故道士としては優秀で、魔物、妖怪の類を征服する術も持っているほどです。
ある時、皇帝(恐らく話の流れ的にこれも明皇だと思う)に「あの張果なる者、いったい何者か?」と聞かれ、法善は固く口を閉ざしましたが、しつこく詰問するので、「もし陛下が冠を脱ぎ、裸足になられたら、私も本当のことを申しましょう。」と言いました。
帝がその通りにしたので、法善はやむなく張果の正体を明かします。
「混沌の地から、初めて天地が分かれた時、白こうもりの精として……。」言い終わらないうちに法善は目・鼻・口・耳の七つの穴から血を吹き出し、死んでしまいます。
帝が慌てて冠を脱ぎ、裸足になって張果に許しを請います。しかし張果は「この道士は口が多く、もし罰せられなかったら、天地の機微が漏れてしまいます。」と取りあいません。しかし何度も懇願され、仕方なく法善の顔に水をかけて生き返らせました。
うわぁ…張果怖いよ~(((((((( ;゚Д゚))))))))、八仙で一番怒らせちゃいけない人という印象を持ったね私は。
その後、皇帝は(もしやビビったのか)張果を重く扱って「通玄先生」と呼ばせます。年を取って病気がちな事を理由に恒州に帰らせて欲しいという張果の要望を受け入れ、一度は帰らせましたが、また召し出そうと使いを出します。それを聞きつけ、とうとう張果は体を残して魂魄となり、仙界へと昇って行きました。身体は弟子によって葬られましたが、棺を開けると中は空になっていたそうです。
2011/11/30